私たちは、愛犬を人間の子どもと同じように考えてしまいがちです。
それは、人に叱ったり、叩いたりすることで行動を改めさせる行為を、犬にもすれば改めてくれるだろうと思ってしまう考え方です。
犬を飼っていると、どうしても愛犬のトレーニング(しつけ)は避けて通れませんよね。
しつけをする時は、叱ったり・罰をあたえたり、反対に褒めてあげたりしますよね。
犬のしつけ方も時代と共に変化しています。
昔はよかったのに、今は虐待にだってなってしまう行為もあります。
そこで、少し考えてみましょう。
今やっている行為が本当に正しいのかどうか?犬の学習のために役に立っているのでしょうか?
今回は、愛犬の叱る・罰について考えてみましょう。
《はじめに》
犬の行動や習性を理解しましょう。
以下にあげることは、犬にとって自然な行動ですが、人間社会で共存していくためには、迷惑になる行為であります。
- 吠える
- 飛びつく
- かじる
- トイレの失敗
なぜしつけるのか?
飼い主としてやるべきことは、人間社会で愛犬が共存し、他の人や犬への迷惑な存在にならない事。
また飼い主さんと一緒に幸せな暮らしができること。
その為には飼い主さんが、責任を持ってしつける義務があります。
しかし!しつけだからといってやってはいけない行為があります。
これは、愛犬との信頼関係が崩れるだけでなく、余計に従わなかったり攻撃的になってしまう原因となります。
また、犬の性格によっては、常に飼い主さんの顔色をうかがいビクビクしながら生活することにだってなりえます。
どちらにしても、お互いが幸福であるという結果になりません。
《罰とは何か?》
罰というと、犬を叩く、仰向けにして押さえつける、マズル(鼻先)をつかむといった体罰を思い浮かべるかもしれませんが、言葉で叱りつけることも罰になりかねません。
一般的に身体的な罰・精神的な罰の2種類があります。
身体的な罰
殴る・蹴る・叩くことの暴力から、リードを引っ張る・動けないように縛るなどなど。
精神的な罰
怒鳴る、大声で叱る、閉じ込める、不快な音を近くで慣らす。
どちらの罰も痛みを伴うもので、どちらの罰も学習・素行の改善を阻害するだけではなく、妨げとなってしまいます。
犬は人と違い言葉の意味や論理は理解できるはずがありません。
叱られても嫌な気持ちになるだけで、飼い主はなぜ叱るのか、なにが原因なのかも、どう行動すればよいのかもわかりません。
無意味な罰を与えることで、犬は余計に学習しなくなります。
《犬に罰を与える行為について》
罰にもいろいろ想いつく動作がありますね。
以下のような体罰を思い浮かべることが多いと思います。
犬を叩く
これは昔のしつけとしては許容範囲とされていましたが、現在ではしつけと称しても、肉体的苦痛を与えてしまうので、絶対にしてはいけない行為となっています。
叩いたところで、プラスになる事はまずありません。
小さい犬であれば、ケガあるいは骨折などしてしまいますし、中型犬以上でも強いストレスや不信感・恐怖心・警戒心を植え付けてしまいます。
これをすることで「ハンドシャイ」になり、人の手を見ると怯えたり・攻撃的になってしまうことになります。
飼い主さんの手だけは、撫でてくれたり、抱っこしてくれたり、美味しいものをくれたり、遊んでくれたり、愛犬の大好きな手でなければいけません。
犬を仰向けにして抑えつける
そもそも、犬が仰向けにになるという事は、急所の部分を見せるという事にもなりとても危険な行為です。
犬が飼い主さんに自ら仰向けになる行為は「へそ天」という、飼い主さんに対して、絶大な信頼している際にする行為ですが、強引に仰向けにさせるという事は、服従させるいう意味になり、虐待となってしまいます。
言う事を聞かないからといって服従ポーズを力ずくで押さえつけられても、犬にとってみると恐怖を感じるだけです。
こうなると、犬も身を守る方法として、威嚇や噛むという攻撃的な行動に出る事になってしまい、しつけという行為ではなくなってしまいます。
犬のマズルをつかむ
言う事をきかなかったり、犬のマズル(口吻)グッとつかみ、観念するまでつかみ続けるという(マズルコントロール)という行為もも、昔は許容範囲とされてきました。
マズルコントロールとは、母犬の子犬の口先を軽くくわえ、子犬を落ち着かせたりする行為であるため、罰としてマズルをつかむ行為は誤りとなりとなります。
犬にとってマズルは敏感な部分のため、強引につかまれると、恐怖・痛みなどを感じることになります。
やはり、これも飼い主さんとの信頼関係の崩れ、マズルをさわろうとすると噛んだり攻撃的な行動するようになる原因となります。
これが原因で、歯磨きやお手入れができなくなってしまいますので禁止です。
犬をハウスに閉じ込める
罰として、愛犬をハウスに閉じ込めるのも厳禁で、ましてやハウスを叩くなど絶対にしてはいけません。
狭い空間などは、犬にとって落ち着ける場所でなければいけません。
しかし、強制的に入れられると、嫌な場所となってしまいハウスに入ることを拒んでしまうことになります。
反対に、災害・入院・おでかけなど、入らないといけなくなったとき相当なストレスとなります。
そのため、罰でハウスに閉じ込めたり・叩いたりすることは厳禁です!
その他の行為
- 犬の首を絞めつける
- 空き缶などに小銭を入れて犬の近くに投げる。
- 犬の入っているケージを叩く。
- 犬に自分の顔を近づけてにらみながら叱る。
- 叩くフリや叩くマネ。
などなど…。ついついやってしまうことはありませんか?
こんな罰は、単純に恐怖をあたえてしまいます。
罰を与えることによってのメリットは皆無といっていいでしょう。
反対に感情に任せた罰は、逆効果しかないかもしれません。
恐怖の体験などは、与えられた罰とその時の状況を結び付けて記憶してしまいます。
《叩くなどの暴力は反則行為である》
叩くということは、犬に対して反則行為である!
「叩く」という行為は、相手が人であっても犬であっても暴力と同じです。
しかし、人間同士であれば叩いた理由や弁明などコミュニケーションをはかれます。
犬についてはどうでしょうか?
犬は言葉のわかりませんし、話すこともできません。
したがって人間同士のようなコミュニケーションができません。
そのため、叩くことは言葉を理解できない犬に対して反則行為であるといえます。
《叩いてしつけることのデメリット》
私たちが、しつけという理由で叩いたとしても、犬の立場から考えると、なぜ叩かれたのかが分かりません。
なぜ怒られているのかを理解できないため、愛犬は恐怖を覚えてしまい、どうすればよいのかわからなくなります。
その結果、行動が委縮してしまったり、「何もしないほうが叩かれない」と無気力な状態に陥ってしまったりする場合があります。
叩かれた時の場所や状況や環境など、すべての要素が結びつき、「嫌な場所、嫌な人、嫌な事」と認識してしまいます。
また、人の力というのは案外強いもので、怪我をさせてしまったり障害を残してしまったりすることもあります。
《犬に暴力や虐待してしまいそうになったら…》
飼い主が、罰を与えることがパートナーに対して本当に正しい行為であるかを、冷静になって見つめなおしてください。
犬のしつけも子育てと同じなので、ストレスでどうしても日常的につい暴力ふるってしまうなどの場合は、獣医さんやトレーナーさんに相談してみるのいいかもしれません。
- 愛犬がいう事を聞いてくれない。
- 問題行動が多く困っている
- とにかくやめさせたい
などしつけに悩んでいるのであれば、はやめに相談することをおすすめします。
一人で絶対に悩まないでくださいね!
《なぜ罰をあたえてはいけないのか?》
効果を期待するために徹底するのは、現実的ではないことがわかります。
なぜ、罰をあたえてはいけないのかをまとめてみました。
私たちは罰の与え方を理解していない
罰というのは、何かを学ぶために有効な手段といえる場合があります。
しかし、それは条件が付きまといます。
絶妙なタイミング・絶妙ないつもと同じ強さなどで与えなければならない、専門的な話しになります。
私たちはそんな専門的な罰を与えることはできませんよね。
それを理解せずに、いつも違うタイミング・強さ・気分次第で怒ったり怒らなかったり…。
そんなことをしても、何で叱られてるのかすらも犬は理解できません。
罰は学習や素行の改善を阻害してしまう。
犬は飼い主に褒めてもらうために、いろいろ努力しようと「試行錯誤」しています。
そのために、どうすれば飼い主さんに褒めてもらえるかなど、犬なりに一生懸命考えて試行錯誤し学ぼうとしています。
飼い主も愛犬も「褒める」という事を通じて、飼い主は伝え、愛犬は学ぶという関係が生まれてきます。
反対に気に食わないことをして、飼い主が叱っていては、このやり取りが達成できません。
犬も飼い主に褒めてもらおうと、試行錯誤する努力もしなくなってしまいます。
だって、怖いんですもの…。
罰は恐怖を生む
犬でなくても私たちですら、罰というのはとても恐怖を感じています。
それは、精神的な罰・肉体的な罰どちらも同じことです。
愛犬からすると、必要以上の事で何かを禁止していても。
タイミングがあいまいなために、従い方がわかない命令を下されているように映り、ただただ不安で恐怖なだけです。
人も動物も、恐怖を抱きながら幸せにはなれませんよね。
なので、罰による脅しや傷つける行為は、犬にとって幸せとは程遠いものとなります。
飼い主と愛犬の信頼関係は崩壊する
先ほども述べたように、私たちは罰を与えるタイミングなどの専門的な知識がないので、愛犬からすると理解できません。
暴力を振るわれて怪我したり、精神的に追い詰められて怖い思いをしたりすることになってしまいます。
犬からすると、罰を与える飼い主の支離滅裂な行為は予測不能となっています。
それが続くと、信頼しろと言われても無理ですよね。
傍に行くのも嫌になると思います。
犬に情報を伝達できない
罰というのは、してほしくない行為をした時に発生するものなので、「してはいけない行為」はわかるけど、「良い行為」というのが何なのかが、全くわからないのです。
正解がわからないので、試行錯誤のしようがありませんよね。
答えが無いしつけを永遠にされているだけで、いつ叱られるかわからないのをただ怯えなければいけませんよね。
犬も、「何が正しい行為なのかがわからなければ、良い行為」なんでできるはずがありません。
《「ハンドシャイ」を知っていますか?》
犬に罰をあたえることで、深刻な悪影響が生じてしまうことがあります。
人間の手で体罰を受けた事によって、人間の手を恐がるようになる現象の事を言います。
その現象によって、恐怖を逃れようとして、唸ったり、歯をむき出したり、咬みつこうとします。
さらには、犬の近くで手を見るだけで唸ったりしてしまい、怒鳴られていた経験があると、家族が大声で話していただけで、怒ったり、噛みついたりするようになってしまいます。
《しつけは褒めて伸ばしましょう!》
与えてもよい罰も中には存在します。
罰といっても全てが恐怖や苦痛を与える罰ではありません。
その代表例が「無視」です。
(例)犬が飼い主に相手してもらいたくて吠えたとします。
普段は、飼い主がやめさせようと名前を呼んだり注意したりするとします。
その代わりに、吠えたら「無視」または「犬がいる部屋から退室」をする罰をあたるとします。
そうすると、犬はこの作戦がうまくいかなかったとなり少し不安を覚えます。
しかし罰を与えてしまったとしても、反対に必ず代わりのご褒美をしてあげましょう。
対応策としては、
「吠えているときは無視をして、静かにしているときだけ相手をする。」
このように叱ってばかりではなく、今回のケースのように静かにしているような良いことをしているとき、思いっきり褒めてあげなければいけません。
しっかりメリハリをつけましょう。
褒めて伸ばそう!
犬を訓練するために最も有効で重要な方法といえば、褒めるという方法です。
これは、今後も繰り返してほしいと思う行動したとき、ご褒美をあたえるという方法です。
犬はそれで良い思いをしたので、その行動を繰り返そうとします。
ご褒美は、おやつをもらったり、遊んであげたり、おもちゃを与えたりなど様々です。
そのために、しつけの基本は「褒めて伸ばす」を基本としたトレーニングするようにしましょう。
ただ「叱る」を「褒める」に変えることで、飼い主も愛犬も意思伝達が可能になり、犬を飼うという本来の幸せな生活ができるのです。
もし、どうしてもしつけに悩んだり、困った場合は、獣医さんやドッグトレーナーに相談する方法を検討しましょう。
《罰に対するまとめ》
犬はそれぞれ性格が異なるため、さまざまなしつけが必要となるものです。
しかし、犬に恐怖を与えたり苦痛を与える事になってしまうような行為では、しつけではなく暴力となってしまいます。
反対に信頼関係の崩壊や怪我、さらには犬の性格まで変えてしまう恐ろしい結果を招くことになりかねません。
飼い主もきちんと理解して、責任を持ちしつけると共に、飼い主も愛犬も幸せでなければいけませんよね。
いかがでしたか?
私も自分の心理状態やさまざまな状況によって、愛犬に対してついつい(なんで!?)イライラしてしまうこともしばしばあります。
記事を書きながら、もう一度考え直してみようと思いました。
愛犬の「しめじ」が私のとこにきて幸せや!と最後まで思ってもらえるために…。
もう一度、自分と愛犬との信頼関係を冷静に見つめ直す事も大事ですよね。